Lasp舞台写真マガジン
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仲道郁代ピアノリサイタル ☆ プレイエルとヤマハCFXで弾くショパンの響き

2018/11/02
 

仲道郁代によるショパンプログラムのリサイタル。使用楽器はショパン当時のプレイエルと、現代のヤマハCFX。二部構成による異色かつ意欲的な公演です☆

©Lasp Inc.

 

仲道郁代 ピアノ・リサイタル『ショパンを弾く』 ~プレイエルの響き、コンサートグランドピアノの響き~

Road to 2027  Ikuyo Nakamichi plays Chopin

2018年10月27日 東京文化会館 小ホール

 

 

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東京文化会館 小ホールの舞台に置かれたこの楽器。
ショパンが生きていた時代に製造された、プレイエルのピアノだ。

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製造年は1842年。
フランス貴族の館に残されていたものを、パリの専門家が修復した。
2007年に、当時のままに保存されていたプレイエルに触れてその「しなやかな強さ」に魅せられた仲道は、その後みずからプレイエルを手に入れて所有することとなった。
それがこの楽器である。

現代のピアノはサウンドのダイナミズムと均一さをひたすらに求めた結果、低音から高音まで綺麗に大きな音が出るが、色彩感に乏しい。
対してこのプレイエルはきわめて色彩感に富んだ立体的に語り掛ける音を放つ。
御覧のように、低音側の弦と高音側の弦が現代ピアノのように交差せず、全部の弦が平行に張られている。弦の材質も違う。
打弦方式も違うし、全体の構造も違う。
現代のピアノの内部は巨大な金属フレームだが、この頃はまだ金属が少なく、大部分が木で出来ている。
現代ピアノと比べるとタッチのコントロールは非常に難しいが、仲道郁代はそんな差異をまったく感じさせないほど見事に176年前の響きを現代に蘇らせるのだ。

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

この日のプログラムはすべてショパン。
前半は、24のプレリュード Op.28。
24の調性すべてが網羅されるこの曲では、現代と違う不等分律の調律の良さが存分に生かされ、楽器の持つ音色と古典調律が相俟って楽曲の持つ色彩感が発揮される。

 

仲道郁代©Lasp Inc.

後半は、4つのバラード。
ショパンの楽曲の中でもとりわけ人気のあるバラード全曲を、この楽器で弾ききった。
歌うだけではない、語りかけるショパン。音の減衰が早く音域による音色差に富むプレイエルは「語る」ことにかけては現代ピアノとはまったく異次元の雄弁さを見せる。そんなプレイエルでショパンのバラードを聴くことのできる聴衆は、じつに幸せだ。

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

 

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

プログラムの前半にプレイエルを弾く機会はこれまで何度もあった仲道だが、フルプログラムをこの楽器で通すのは、東京公演ではこの日が初めてとのこと。
ベートーヴェンの没後200年にあたる2027年に向けて、ベートーヴェンを中核に据えたリサイタルシリーズと共に、親密な空間で味わうリサイタルシリーズを始動し、その第1弾としてショパンの作品を取り上げた仲道郁代だが、ピアニスト人生をかけた挑戦への意気込みを如実に感じさせる意欲的な試みであった。

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

 

 

 

 

驚くことにこの日、仲道郁代は続けてもうひとつのリサイタルを行った。
リサイタル『ショパンを弾く』の第一部は、ここまでのプレイエルでの演奏。その後、約一時間の時をはさんで行われた第二部は、現代のコンサートグランドピアノで第一部と同じ曲がもう一度演奏された。

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使われた楽器は、ヤマハのCFX。

実は当初、第二部はスタインウェイで演奏される予定だったのだが、一週間前になって仲道自身がヤマハCFXで演奏したいと希望し、変更された。

 

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CFXという楽器もまた、その繊細さゆえにコントロールが難しく、弾き手を選ぶと言われるほどに弾きこなすことが困難な楽器である。
だが仲道郁代の手にかかると、CFXが語り始める。音の粒立ちの良さ、低音域のしなやかさ、どこまでも滑らかに歌い続ける高音。そうした仲道の演奏が持つ特質が気難しいCFXを見事に語らせるのだ。

 

仲道郁代©Lasp Inc.

24のプレリュードと4つのバラードを一日に二度弾くというだけでも大変なことだが、第二部ではそれに加え、マズルカとノクターン一曲ずつ、さらに最後に「英雄ポロネーズ」が演奏された。
プレイエルによる演奏はショパンが思い描いた理想へのアプローチ、そしてCFXでの演奏はショパンからの贈りものを受け取った現代のピアニストによる新たな価値の開花と言えよう。
じつにロマンチックな、夢に満ちたコンサートであった。

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

 

仲道郁代 次回 リサイタル
2019年5月26日(日)14時 サントリーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=710

 

仲道郁代は Road to 2027 プロジェクトとして
10年にわたるリサイタル・シリーズを展開中。
また、プレイエルで演奏したCDも発売されています。
詳しくはオフィシャルページを御覧ください↓↓↓
http://www.ikuyo-nakamichi.com/

 

 

仲道郁代©Lasp Inc.

 

2018年10月27日 東京文化会館 小ホール

photographs by Atsuko Ito & Lyuta Ito (Lasp Inc.)
Text : Lyuta Ito

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