
[演劇] 「命売ります」 2018 PARCO PRODUCE 三島×MISHIMA 主演 東啓介 脚本・演出 ノゾエ征爾 (サンシャイン劇場)
人が生きることの意味を鋭く問う三島由紀夫の問題作を、ノゾエ征爾がユーモアを交えて刺激的に再創造。個性派役者陣の名演技にも注目が集まった☆
These are photographs of a stage work based on a novel of
Yukio Mishima.
Text is in Japanese only.

命売ります©Lasp Inc.
「お好きな目的にお使いください。当方、二十七歳男子、秘密は守り、決して迷惑はおかけしません」
自殺に失敗したひとりの男 山田羽二男が、自分の命を売りに出した。
その新聞広告を見て次々に訪れる客。
しかし男は、役目を果たしても殺されることなく生き延びてしまう。
原作は三島由紀夫によるエンタテインメント小説。
人間と人間の関係性と、生きること・死ぬことの意味を深い洞察に基づいて炙り出す三島独特のストーリー展開を、ノゾエ征爾がユーモアを交えながら舞台化した。
主演は、ミュージカルで大活躍中の東啓介。
彼を取り巻く登場人物は、ノゾエ征爾自身や温水洋一ほか、個性的な役者陣。
物語はひたすらに、人と人との関係を描く。
人妻役は、莉奈。
その愛人のデッサン男は、不破万作。
謎の老人、温水洋一。
図書館の貸出係の女の役は、家納ジュンコ。
ノゾエ征爾、町田水城、市川しんぺーは、マフィアっぽい外国人たち他、複数の役をこなす。
ちょっと変わった女たち、平田敦子と川上友里。
物語の中で重要な役割を持つ少年の役には、いまNHKドラマ「半分、青い。」で好演してる上村海成。
そしてもっとも印象的な役といえよう、吸血鬼の女に樹里咲穂。
生と死という、対極にあるようで表裏一体でもあるふたつの概念を追い続けた三島文学の真髄を感じさせる舞台空間。
幸せの絶頂で死を迎えるという三島的理想。
しかしまた生き延びる羽仁男。
羽仁男に生きることを問う少年の存在。
そしてまた生まれる新たな関係。
没落したお嬢様 倉本玲子役は、馬淵英里何。
妻の死を願った老人の中で生き続ける妻の存在。
死ぬはずだった男が幸せな家庭を持つという矛盾。
ほんとうに羽仁男は死にたいのか。
平凡に生きていく事を望みながら人はそれぞれの人生を生きる。
羽仁男は逃れられない運命に翻弄される。
そして物語は意外な展開を迎える。
人が生きることの意味を鋭く問う、三島の問題作。
混迷するいまの時代にこそ強烈な意味を放つ三島作品。
ノゾエの演出によって動的に展開されたこの作品は現代人必見の舞台であったと言えよう。
2018 PARCO PRODUCE三島×MISHIMA
命売ります
原作:三島由紀夫(「命売ります」ちくま文庫)
脚本・演出:ノゾエ征爾
主演:東啓介
《東京》2018年11月24日~12月9日 サンシャイン劇場
《大阪》2018年12月22日 森ノ宮ピロティホール
(公演は終了しました)
PARCO STAGE オフィシャルサイト
http://www.parco-play.com/s/program/inochi/
2018年11月24日(ゲネプロ) サンシャイン劇場
Photographs by Atsuko Ito & Lyuta Ito (Lasp Inc.)
with FUJIFILM X-H1 / X-T3
Text by Lyuta Ito
無断転載ヲ禁ズ©Lasp Inc.