Lasp舞台写真マガジン
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Trio Ace Vol.1 『オリジナル楽器が紡ぎ出す、ロマン派の調べ』 19世紀のエラール製ピアノによるピアノトリオで蘇るフランス音楽の響き

2019/01/03
 

ピリオド楽器によるショパンコンクールで2位入賞した川口成彦・ヴァイオリンの丸山韶・チェロの島根朋史の3人による、ピリオド楽器でロマン派音楽を演奏する画期的なシリーズが開幕した! その記念すべき第一回目をLaspが取材しました。

These are photographs of the first concert of Trio Ace.
They played French piano trio music with period instruments including Erard piano made in 1890 in Paris.

Erard©Lasp Inc.

演奏会場に入るとステージに見慣れないピアノが鎮座している。
訪れた聴衆も多くがこのピアノに注目していた。

Erard©Lasp Inc.

1890年製の、エラール製ピアノ。
弦がすべて平行に張られ、低音弦と高音弦が交差する構造の現代ピアノとは見るからに違う。

Erard©Lasp Inc.

古楽器だが、主に古典派以前のものがイメージされる一般的古楽器と比べると年代はずいぶん現代に近い。しかし、その音は現代ピアノとはかなり性格を異にする。このエラールのピアノを中心に、19世紀終わりから20世紀初頭にかけてのフランス音楽が演奏された。

会場は豊洲シビックセンターホール。舞台背面がガラス張りで湾岸の夜景が見える、スペシアルな雰囲気のホールだ。

豊洲シビックセンターホール©Lasp Inc.


その背面のガラスに映り込む奏者の姿もまた芸術的な趣を得る。

Trio Ace©Lasp Inc.

Trio Ace©Lasp Inc.

エラールのピアノを演奏するのは、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位に入賞して注目される川口成彦。

Trio Ace©Lasp Inc.

 

Trio Ace©Lasp Inc.

ヴァイオリンは古楽オーケストラ La Musica Collana を率いて精力的に活動する丸山韶。

Trio Ace©Lasp Inc.

チェロはLa Musica Collana首席奏者であらゆる時代のチェロを弾きこなす島根朋史。

Trio Ace©Lasp Inc.

この東京藝術大学出身の三人によるトリオ編成で、いわゆる「古楽」の枠をはみ出してロマン派音楽の響きを追求する試みとして、19世紀後期の大作曲家セザール・フランクとその弟子・友人らの作品が演奏された。
フランク以外は一般に馴染みの薄い(しかし非常にすぐれた)作曲家たちで、聴衆の多くはこの日初めて聴く曲がいくつもあったであろう内容だ。
演奏会はシャルル=マリー・ヴィドールの「ピアノ三重奏のための小品集」の中からの数曲、おそらく本邦初演と思われる楽曲で幕を開けた。

Trio Ace©Lasp Inc.

また、トリオ編成の演奏会だが独奏もあり、川口成彦はエルネスト・ショーソンの「風景 ハ短調 作品38」を演奏した。

Trio Ace©Lasp Inc.

ヴァイオリン独奏は、ギョーム・ルクーのヴァイオリンソナタ ト長調。

Trio Ace©Lasp Inc.

チェロ独奏は、ヴァンサン・ダンディのチェロソナタ ニ長調 作品84。

Trio Ace©Lasp Inc.

ところで弦楽器のほうは現代とどう違うかを見てみると、ヴァイオリンは御覧の「あご当て」の位置が違う。現代ではもっと左寄りのほうに付いているものが普通だが、19世紀前半に初めて登場したあご当ては中央に付けるものであった。
まだあご当てそのものが存在しなかったバロックや古典派の頃と比べると現代寄りだが、それでもこうした違いが演奏法に影響する。

Trio Ace©Lasp Inc.

チェロはバロックのものと同様に、エンドピンがなく、脚に載せて弾く。これにより現代チェロとは大きく演奏ニュアンスが異なる。

Trio Ace©Lasp Inc.

いずれの楽器も、弦は裸のガット弦が基本(低音弦を除く)で、音量や派手さは控え目になるが、より微細なニュアンスを表現できる。
弓もバロック弓と同様に音圧よりもニュアンスの豊かさを重視する作り。
こうした弦楽器で演奏されるフランス近代音楽は、じつに色彩に富んでやさしい息遣いが美しい。

Trio Ace©Lasp Inc.

Trio Ace©Lasp Inc.

プログラムの最後はセザール・フランクの「協奏的三重奏曲 第2番 変ロ長調 作品1-2」で締めくくられた。

Trio Ace©Lasp Inc.

 

大学時代から仲の良かった三人の息の合った演奏により、ロマン派音楽が当時のままの響きで見事によみがえった画期的コンサートであった。

Trio Ace©Lasp Inc.

 

2018年12月12日 豊洲シビックセンターホール

Photographs by Atsuko Ito & Lyuta Ito (Lasp Inc.)
with FUJIFILM X-H1/X-T3

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